院長・スタッフ紹介

摂食嚥下担当医 歯科医師 佐久間光恵(さくま みつえ)

佐久間光恵

経歴

日本大学松戸歯学部
日本大学松戸歯学部大学院
歯学博士
日本大学松戸歯学部付属病院 特殊(障害者)歯科

大学病院でも診ているということなのですが、先生の所属されている「特殊(障害者)歯科」ってどんな診療科なのですか?

よく「子供だけ来ているのでは?」と思われるのですが、健常者の0歳~18歳は、小児歯科に行きます。障害者歯科(特殊歯科)は、0~100歳までの方がいらっしゃいます。障害の幅は広く、一番オーソドックスなのはダウン症。あとは、歯科恐怖症の人も来ますね。

「歯科恐怖症」の方を「障害者歯科」で診るんですか?

だからこそ「特殊歯科」という名前にしてあるんです。「歯科恐怖症」は障害名ではないですが、普通に「こんにちは」と来院して、ユニットに座って会話をし始めた瞬間に涙が出ちゃう方もいるんです。それだと、普通の歯科じゃ診られないんですね。

行動変容を調整しながら、麻酔をして眠らせながら治療することもあります。
静脈内沈静法(当院で出来ます)や、場合によっては全身麻酔もします。

高齢者の方で、脳梗塞後遺症とか脳出血後遺症とかも来ますし、パーキンソン、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方もいらっしゃいます。
ベロが不随意に動いちゃう、動いちゃうと治療ができないから、大学だと他の科から頼まれることもあります。行動調整が重要です。

行動調整?

例えば、自閉症の子の場合だと、繰り返し行動があったりとか、こだわりが強かったりとか、オウム返しだったりします。
普通の歯科だったら、ミラー(口の中を診る棒の先に丸い鏡が付いているもの)を口の中に入れるまで30分なんて掛けられないじゃないですか?
特殊歯科だと、ミラーを入れる練習、ユニットに座る練習、待合室に入ってくる練習という風に段階を踏みます。
小さいうちからそういう事を繰り返すと出来るようになって、多くの子がふつうの方と同じように歯科治療を受けられるようになります。
大学は松戸にあるのですが、「うちの子を診てくれるところ、ないんです」といって、1時間半2時間掛けて来られます。
その子達が、近隣の歯科医院で受診できることがゴールですね。
ずっといらっしゃる先生は「やりがいがあって楽しい」って言っています。

先生はどうして特殊歯科を選んだのですか?

学生のときに、矯正とか口腔外科とかいろいろな科で研修します。
特殊歯科を見学したときに「やりがいがありそうだな」と思ったんです。
お口の中をスケーリングするだけで、感謝されるんです。
それと、障害者歯科がある大学って少ないんですね。

川名部歯科では、訪問診療を担当されるそうですが「訪問歯科」と「障害者歯科」は違うんですか?

私は延長線上だと思っています。
例えば障害者歯科にも、杖をついて一生懸命通ってきてくださっている障害者・高齢者の方もたくさんいます。
大学としても、摂食嚥下の治療のために訪問にも出ています。
摂食嚥下に関しては障害者歯科で診ていて、私は外来診療をしています。
そこで、飲み込み方の指導とか、全身の体操とか、筋肉の直接訓練・間接訓練をします。

摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)って何ですか?

平たく言うと「食べることに何らかの支障があること」ですね。

例えば、まず食べ物を食べ物と認知する(認知期)、お口への取り込み、咀嚼(そしゃく)、お口の中で食塊(しょっかい)としてまとめて、ベロを使って咽頭(いんとう)に送り込んで、喉頭(こうとう)に送り込みます。
これが摂食です。
これらの動作が健康だと無意識で出来ているのですが、その機能も衰えてくるのです。

摂食した後は、嚥下ですね。
食道の動きが悪かったら、胃まで行かないんです。
腸にもありますが、食道にも蠕動(ぜんどう)運動があってはじめて胃まで届くんです。
食道から胃に食べ物がストンって落ちるんじゃないんです。
「あ、飲み込めたね、大丈夫だね」といっても、高齢者の人だと筋力が衰えていて飲み込んでも途中で溜まってこともあるんです。

ずっと溜まってそのままになっていると、誤嚥(ごえん)しちゃったりとか、逆流したりするんです。
安易に「食べるというところだけ診ればいい」という訳ではないんです。
最近VEという嚥下内視鏡があって、食道の動きを診ることができます。
一緒に行っている先生も言うんですが摂食嚥下だけを診ればいい訳じゃなく、どういう風に生活しているか?身体を動かしているのか?自分で食べるのなら手の動きがどうか?とかも重要なんですね。

「食べているよ」と脳に信号がいって、「噛んでるよ」と信号がいって・・そんな複雑なことを無意識でしているのですね・・深いですね。

難しいです。
単に飲み込むことじゃなくて、胃までしっかり送ることが大事です。

胃ろうの方もいますし、腸ろうの方もいます。
胃ろうだからって、流動食をジャーと入れとけばいいというものじゃない。
胃ろうだと、お医者さんでも「歯医者と関わらなくていいでしょう?」と思う人、歯医者さんでも「胃ろうなら歯科は関係ないでしょ?」って思う人もいるんですけれど、そんなことないのです。

歯があるとしたら、歯に付いている細菌を誤嚥することもあるので誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
胃ろうにしているんだったら、逆流して逆流性誤嚥性肺炎にもなります。
そういう方が、かなりいらっしゃるので、歯科は切っても切り離せないのです。
口腔ケアは必要なんです。

「ペーストでお口から食べたい」という人には、筋肉のマッサージはかなり大事です。
訪問で行った先で、いろいろ判断します。
川名部歯科でも木曜に訪問歯科に行っていますが、体操もやっていますよ。

体操までするんですね!ちなみに治療の説明は誰にするのですか?

頭がしっかりしている場合は、ご本人にお話します。
寝たきりの方は、ご家族に説明します。
ご本人にも説明して「運動毎日やっていますか?」とか、ご家族にも確認します。
体を動かすと、内臓も動きます。

 

 

食べる姿勢も大事ですね。
こんなになって食べていると(下記写真参照)、誤嚥の可能性が高まります。
筋肉も上手に動かせないのです。

 

どんな方を訪問診療で診ているのですか?

飲み込みが辛くなった方とか、うまく物が噛めない方などです。
原因としては、入れ歯が合わなくなっていたり、筋肉が衰えていることもあります。
口腔乾燥症、唾液(だえき:よだれ)がうまく出ないから、食べ物を一まとまりに出来なくて飲み込みが出来ないという方もいます。
その場合、お薬の副作用ということもあるので、その場合は薬を変更することもできます。

食べることって、一番大事なんです。
「この後、一生、口から食べられませんよ、これから点滴で生活してください」って言われたら「もう無理!」って思いますよね?

摂食嚥下の訓練をすれば、口から食べ続けられる可能性が上がります。
健康寿命が伸びます。
食べ物の形態とかも重要で、硬いものは食べられないけど、ちょっと調理を工夫すれば食べられたりします。

「ペーストって、ドロドロって食べる気しないんじゃない?」と思いますが、最近いろいろ開発されていて専用の食品もあります。

ペースト状にしたものを、鮭の形のようにしてあるんです。
見た目は鮭だけど、ペーストなんですね。
皆さん知らないから、紹介できるんですね。
知らない情報を提供することも、訪問歯科の役割です。

家族が自宅で出来ることってありますか?

例えばシルベスタ体操って言うんですけれど・・摂食嚥下もそうですが、リハビリの体操ですね。
手を上げるときに吸って、手を下げるときに息を吐いて・・という風にやります。

 

 

あと、首周りの筋肉が、ガチガチになっている方がいるんです。
飲み込むときに、ココの舌骨(ぜっこつ)の辺りの筋肉が大事になるんです。

 

 

あごの筋肉と繋がっていて、こっちが伸びてこっちが縮んでという風に飲み込みを助けているんです。あとは、シルベスタ体操というものでこのようにやります。(下記写真参照)

 

いろいろ教えていただきありがとうございます!では今度は先生に事について教えてください。ヨットが好きということなのですが・・・。

はい!大学の部活から始めたのですが、やってすごい楽しいんです。スナイプという二人用のヨットです。
雲の動きと、潮の動きと、波を見て「後何分でこんな風を吹くんだろうな」と予想を立ててやります。
クルーという役割だったのですが、ずっと腹筋している感じです。

歯科大生の大会があるんですけれど、全国で1位を取ったんです、これは自慢できます。(笑)
卒業してから一回も行けてないけど、時間があったら行きたいですね。
大学のヨット部は、新木場でヨットを置いてあったので、東京湾でディズニーランドを見ながら練習していました。

先生、今日のインタビューで一番テンション高いですね。(笑)

訪問の現場には衛生士さんと行くんですが、コーヒー出してくれちゃっておしゃべりになっちゃう現場もあり、結構楽しくやっています。
現場が明るくなるように、心がけています。
確かに事態は深刻なんですけれど、その中でも楽しく明るくやっていくのが重要と考えています。
いろいろ気軽に話していただきたいです!

【インタビュー】2018/7/5